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山陰における戦後の地方創生のシンボル 中浦食品「どじょう掬いまんじゅう」

松江市 2026/02/05 14:08
松江駅構内の土産物店、お客さんが「どじょう掬いまんじゅう」を選んでいるところ
松江駅構内の土産物店、お客さんが「どじょう掬いまんじゅう」を選んでいるところ

山陰地方の数ある土産菓子の中でも、青と白の水玉模様の「ほっかむり」を被り、ひょっとこの表情を浮かべた「どじょう掬いまんじゅう」は、その愛嬌ある姿で半世紀以上にわたり親しまれてきた。島根県の民謡「安来節(やすぎぶし)」をモチーフに誕生したこの菓子は、月平均の販売数は約60万個にのぼり、山陰を代表する銘菓であると同時に、戦後の地方産業振興における成功モデルとしても知られている。
 

中浦食品18代社長、鷦鷯(ささぎ)侑さん中浦食品18代目社長、鷦鷯(ささぎ)侑さん


製造元の中浦食品(松江市)18代目、鷦鷯(ささぎ)侑社長は取材に対し、次のように語る。
「誕生したのは1967年、高度経済成長期のまっただ中でした。観光やビジネスでの往来が急増する中、島根を象徴する特産品が求められていた時代です。そこで、郷土振興を志した祖父(16代目)が菓子製造への参入を決意。安来節の『どじょう掬い踊り』をモデルに、漫画家のおおば比呂司氏にデザインを依頼して本商品が生まれました」
 

島根県民謡「安来節」をモチーフにした郷土菓子「どじょう掬いまんじゅう」島根県民謡「安来節」をモチーフにした郷土菓子「どじょう掬いまんじゅう」


菓子の背景にあるのは、江戸時代末期に起源を持つ伝統民謡「安来節」だ。中でも「どじょう掬い踊り」は、砂鉄採りや泥鰌(どじょう)獲りに勤しむ労働者たちが、その動作を模して酒席で踊った即興芸が始まりとされる。

水玉のほっかむりをし、鼻に一文銭を貼り付けた滑稽かつユーモラスな踊りは、地域の暮らしを象徴する光景だ。中浦食品はこの伝統的な文化記号を郷土土産へと昇華させ、戦後山陰の産業振興を支える象徴的な役割を担ってきた。
 

徳川時代の美保関港の景色の絵図。中浦食品発祥の地徳川時代の美保関港の景色の絵図。中浦食品発祥の地



創業から約300年の歴史を持つ中浦食品は、これまで幾度もの業態転換を経てきた。少子高齢化や食習慣の変化といった現代の課題に直面する中、現在は多角的な経営を推進。看板商品に加え、ジェラートやドーナツといった新ブランドの開発にも着手し、県外や海外市場へと販路を広げている。鷦鷯社長は「時代が変わり、郷土の特産品もかなり変化しました。そもそも食べなくなったものや採れなくなったものも数多くあり、そこに関しては時代の流れに合わせています。今の地域の方々の食生活や文化に合わせて事業展開をする。ここには限界は無いと思います。」と、その決意を語った。

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