「忍者」── 日本史文化における神秘的記号
「忍者」は長年に渡り日本史文化における難解を極めた神秘的記号として君臨していた。その背後では社会的規約に絡みつつ、日本政治や軍事、文化領域への数百年に及ぶ影響を与えた。忍者研究の権威山田雄司教授によると、忍者という仕事は江戸時代の終焉と共になくなったため、本当の忍者は存在しない。ただし、その術を受け継いでいる人はいる。これらのことから三重大学は専門の忍者研究学位を設立した。
「最後の忍者」── 川上仁一(Jinichi Kawakami)さん
忍者の誕生や歴史舞台での活躍の軌跡について、三重大学国際忍者研究センターの山田雄司教授は「忍者の起源は14世紀初めの南北朝時代に遡ります。南北朝時代の戦いはこれまでとは異なり、山岳を利用したゲリラ戦が展開されることになり、そのときに諜報活動や火をかけたりするなどの任務をする『忍び』が登場しました。忍者は京都周辺で誕生したことになります。」と話した。
山田雄司教授(三重大学 国際忍者研究センター)
山田雄司教授は「忍術」が「武術」の一種として捉えられていることについて「忍術は武術と思われがちですが、武術としての側面はごく一部で、総合的な生存技術です。」と指摘した。また、「忍術流派は江戸時代以降に生まれていきました。160ほどの流派があったとされます。武術の側面が強い流派、呪術的側面が強い流派などがありますが、実態はよくわかっていません。」
川上さん(左)は三重大学にて学生達に忍術を指導しています
忍者という仕事は江戸時代の終焉と共になくなったため、本当の忍者は存在しない。しかし山田雄司教授はこうも話す。「千葉県野田にある武神館では道場で護身術としての忍術を教えています。また、最近始まった日本忍者協議会による「忍道」では、最後の忍者こと川上仁一先生を総監修として忍術の技術・精神・知識を養う講座を設けて、学ぶ機会を提供しています。」また、三重大学では専門の研究学位を設け、古文書や歴史の研究を行なっています。
山田雄司教授はアメリカにて忍者の国際文献を調査しています
山田雄司教授は「忍者の知恵をさまざまな分野で活かしてイノベーションを起こしてもらいたいと思っています。これこそが私の目的です。それは江戸時代が終わるとともに忍者という職がなくなり、医者や警察官などの職業に就くことになったのと同じことです。」と話した。