合気柔術の再現と伝承 「大東流」講武館── 川邉武史
川邉武史
合気道の源泉となった「大東流合気柔術」は神秘的色彩を帯びている。その技術体系は莫大かつ複雑で、合気の思想は戦後の日本武道の発展に影響を与えた。大東流合気柔術の極意を再現、伝承するために久琢磨氏と千葉紹隆氏に師事し、久琢磨氏から教授代理を引き継いだ「講武館」館長の川邉武史氏は、久琢磨氏と千葉紹隆氏から受け継いだ技を教えるだけでなく、残された書籍の中から武田惣角の大東流の技を発掘し、再現している。
川邉武史氏(79)、依然として展開される大東流合気柔術の非凡な極意
川邉武史氏は取材に対し、「大学時代から久琢磨先生に合気道を教わり、その期間は4年間にも及びました。植芝流の合気道を学ぶところから始まり、大東流合気柔術に出会ったのは卒業後でした。」と話した。久琢磨氏の他に、影響を受けたのは四国の千葉紹隆氏である。「大東流を学んでるときに、千葉先生の名前はすごいので知っていた。先生から家に電話きて教えるから学ばないかと誘いがあった。それから四年間毎月一回四国に行って学んだ。」
川邉武史氏の教えにおける合気の重要性
なぜ合気道と合気柔術を学ぶことを決めたのか。川邉武史氏は「力対力ではないから、相手の力を緩める。力対力では当たってします、力と力のない方だと、混ざってくる。」と語った。また、どのように正確な大東流合気柔術を学ぶかについては「ゆっくりと動きながら技が掛り出すと徐々に早くする稽古へ。 最初から早くすると捕に技を合す事になる。これは必ず注意すべき点です。」と強調した。
稽古中の川邉武史氏
大東流合気柔術の奥義を探るために、川邉武史氏の先生として千葉紹隆氏のほか、四国の蒔田完一氏、北海道の武田惣角氏の息子武田時宗氏からも学んだ。現在79歳というご高齢な川邉武史氏だが、毎日大東流合気柔術の稽古をつけるのみでなく、毎月自身の弟子と共に伝承された書籍内の技を研究している。川邉武史氏は「これは総伝という、写真で技を残された。一巻から九巻まである。一巻から六巻までは植芝盛平が教えて、七巻から本当の大東流を、武田惣角が記録している。」と話した。写真が1、2枚と非常に少ない中で技を再現することは非常に困難だが、弟子とともに大東流合気柔術の珍しい技を発掘、伝承している。