特集 | FEATURE
天然理心流── 幕末最強剣客集団「新選組」の剣
三鷹市
2023/01/12 10:38
新選組の剣
天然理心流
天然理心流
激動の幕末、「新選組局長」近藤勇と「鬼の副長」土方歳三らが多摩地域にのみ伝わっていた剣術「天然理心流」を歴史の舞台に躍進させた。そして天然理心流門人の核となる人物達は新選組として幕末最強の剣客集団へと成り上がっていった。
表木刀五本とは天然理心流の特徴である重い木刀と気合術を合わせた撃殺稽古のことである
天然理心流十代宗家平井正人は「天然理心流は決してただの剣術ではない。剣術、柔術、棒術、気合術を含む統合武術である。例えば、柄砕や小具足身除之位はそれに柔術を併せたものであり、表木刀五本の技には気を持って相手の気を奪う気術を含んでいる。全ての技法は自然にさからわず天に象どり地に法とり、以て剣理を究めることから、『天然理心流』と命名された。」と話した。
天然理心流の稽古中はいかなる時に敵が襲来しても抜刀できる必要がある
天然理心流の歴史については寛政時代まで遡る必要がある。1790年頃、遠江出身の近藤内蔵之助長裕が諸国漫遊後に古武道の真髄を融合して創立した。内蔵之助が常に真剣勝負を想定して剣術体系をつくりあげ、更に極位必勝の撃殺技法を教えた。これこそが激動の幕末に新選組が名を馳せ、歴史に血の跡を残した理由である。
柔術と高度な融合をした天然理心流
しかしながら、明治維新後には新選組と天然理心流は人々から忘れ去られるとともに禁止された。平井正人はこう話す。「当時攘夷派の勝利を機に、攘夷派と激しく対立した新選組の天然理心流は新政府に憚りながら、多摩や神奈川県、埼玉県の一部で辛うじてその命脈を保つ時期が長く続いた。伝承された技以外にも不完全な技もあり、伝書とも突き合わせながら天然理心流の真髄を後世に継承していきたい。」彼は現在、天然理心流八代加藤伊助氏による撥雲館道場の型伝承の他、門人達と共に過去の文書を発掘整理して残している。より深くまで奥義について解読できることを期待しつつ、世の中の人々に「幕末最強剣客集団新選組の剣」とは何のかを知ってもらいたい。