• Home
  • 特集
  • 数々のドラマ・映画の生け花装飾を手掛け今日本で一番人気のある華道家「大谷美香」
特集 | FEATURE

数々のドラマ・映画の生け花装飾を手掛け今日本で一番人気のある華道家「大谷美香」

東京都 2022/08/31 10:17
Netflix「全裸監督」生け花装飾 ©Mika Otani
Netflix「全裸監督」生け花装飾 ©Mika Otani
華道家
大谷美香

華道家大谷美香氏は、1968年生まれ。聖心女子大学在学中に草月流に入門し、生け花歴は、今年で34年になる。大学卒業後に女性誌の編集者を経て結婚。2児出産後にフリーランスとなり、スタイリスト、Webプランナーとして、広告、出版分野において活躍。イベント、広告撮影現場の装飾を多数手がける。311の震災のときに思うことあり、それまでの仕事を辞め、華道家として人生を再スタートする。

2018年、生け花界を舞台にした連ドラ「高嶺の花」(日本テレビ系放映、石原さとみさん主演)で、生け花監修を行い、 劇中に登場する全174作品の生け花を自ら制作し、一躍話題の人となった。 2019年には、Netflix配給リドリースコット氏制作総指揮のハリウッド映画「アースクエイクバード」で生け花装飾を担当。数多くの映画、ドラマ、CMで、登場人物の心情を映し出すオリジナル性の高い生け花を制作し続けている。そのイノベーティブで芸術的な表現は多くの見る人の心をつかみ、新しい日本文化の真骨頂といえる。英語が堪能なため、海外との強いネットワークを持ち世界中で生け花デモンストレーションを行なっている。気さくな人柄から芸能人へのいけばな指導をテレビ番組や雑誌で行うなど、メディアへの露出も多い。いけばなと他分野の芸術とのコラボに意欲的で、これまでにファッションブランドのプレス発表会への会場装飾、バーチャルリアリティーでのいけばなプログラムの監修を担当するなどもしている。2019年には、郷ひろみさんのコンサートで、歌と生け花のコラボを実現。ダンサーと共に舞台上で踊りながら巨大な作品を制作し話題となった。現在、新潟県越後妻有で開催されている世界最大規模のアートフェスティバル「大地の芸術祭」に巨大な雑木で構成されたカラフルな生け花作品「花笑む。」を出品している。近年国内外で最も影響力のある有名な花道家の1人である。

 
華道家 大谷美香氏華道家 大谷美香氏 ©Mika Otani
 

様々な分野で活躍し変幻自在な生け花を見せる大谷氏。生け花へのインスピレーションは一体どこから来ているのだろうか。「昔から、人間は自分の感じるところ、思うところを何かに託して表現したい生き物だと思います。もはや、表現というのは、人間の欲求に近いのではないかとも思っています。もちろん、形として最終的には『生け花』という形に落とし込みますが、そこに自分の『想い』をこめたいと願っています。その『想い』は、さまざまなものからインスパイアされます。視覚的な建築や美術であることもあるし、文学的な『詩』であることもあるし、ときには、『ニュースを見て』ということもあります。 」と、発想の源が多岐にわたると語った。

 
生け花作品「高嶺の花」©Mika Otani生け花作品「高嶺の花」©Mika Otani
 

【連続ドラマ「高嶺の花」でいけた全174作品】
数多くの作品を生み出している大谷氏だが、一番思い出深かった作品を聞くと、「高嶺の花」の作品たちを一番にあげた。「たくさんの華道家が登場するドラマで、生け花も意味をもってシーンに登場します。 ただ綺麗なだけの花ではなく、それぞれの登場人物の心情や状況を反映した作品にしなければいけなかったので、174作品、全ての作品に想い入れがあります。いける度に、登場人物を体に憑依させるような気持ちでいけました。非常に時間のない中での準備、いけこみの連続だったので、瞬発力が必要とされました。4ヶ月の間、ほぼ寝る間もなく、生け花のことだけを毎日がむしゃらに考え続けた月日でした。あの怒涛の日々は私の中では修行で、華道家としてひとつ次のステップに進めた気がします。」

 
郷ひろみさんのコンサートでいけた作品 ©Mika Otani郷ひろみさんのコンサートでいけた作品 ©Mika Otani
 

【郷ひろみさんのコンサートでいけた作品】
映画・ドラマの生け花装飾を手がける大谷氏がさらに新しい分野に踏み出すきっかけとなったのが人気歌手のコンサートの舞台だった。「日本を代表する歌手の特別コンサートで、彼が歌っている横で、作品をつくりあげていく・・・ まずは、来てくださるゲストの皆さまが楽しめるようなエンターテイメント性の高いものに、制作の過程も含めて仕上げていけなければいけない、という私にとっては、冒険的なお仕事でした。舞台では、私の横でダンサーのみなさんが踊っているので、それでは、いっそ、作品の中にダンサーを取り込んでしまおうと、最後の完成した巨大な作品では、ダンサーのみなさんの足が作品の一部となっています。いけているのも、普通では面白くないと、私も派手な動作で踊りながらいけました。何もなかったところに、彼の歌によって、森の精たちが息吹を吹き返し、巨大な花ができあがる、というストーリーです。ひとりでいけるのではなく、歌手、ダンサー、舞台演出家のみなさんと何度もリハーサルをして、作り上げていった作品。私だけでなく、みんなの想いも詰まっているような気がして、忘れられない作品です。 」


大谷氏が今一番読者に伝えたいこととは何なのだろう。それは、意外にも生け花がそれほど難しくない、身近なものだ、ということだった。「生け花は、日本の単なる伝統的な花いけだと思われがちですが、現代に生きるアートでもあります。そして、日本でなくても、どこでも誰でも楽しめるアートです。私は草月流という流派に属しているのですが、草月流には、120の支部と38のスタディグループが世界中に広がっています。ぜひあなたの近くの生け花教室を探してみてください。一緒に生け花ワールドを楽しんでみませんか?誰か特別な人がやるものではなく、実はあなたもすぐに楽しめる気軽なものだということをお伝えしたいです。 」


 
TOP