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人間国宝安部榮四郎氏と出雲民藝紙の誕生

松江市 2023/08/31 16:11
手漉きの出雲民藝紙を継承する安部栄四郎の孫── 安部信一郎さん
手漉きの出雲民藝紙を継承する安部栄四郎の孫── 安部信一郎さん
人間国宝
安部榮四郎氏

1925年柳宗悦、河井寬次郎、濱田庄司の3人は共に『民藝運動』と名乗る文化運動において『日本民藝美術館設立趣意書』を起草した。民藝運動は「工芸は最も純粋な美として、民衆の日常使用器具として出現した。美とは『用』を体現しており、用と美の結合こそが工芸である。」と提唱した。民芸運動推進への共鳴に向け、安部榮四郎氏は伝統の方法を守りつつ「出雲民藝紙」を創始した。1968年には人間国宝の称号を賜った。現在の出雲民藝紙は孫の安部信一郎さんと安部紀正さんに受け継がれている。

 
安部栄四郎氏の紙漉きの技術を高く評価され、各界の賞を多く受賞しました安部栄四郎氏の紙漉きの技術を高く評価され、各界の賞を多く受賞しました
 

安部榮四郎氏の出雲民藝紙の持ち味は和紙の持ち味を殺さずに生かして染めた和染紙。安部信一郎さんはインタビューに対し、「楮紙は、素朴で強靱、和紙の特徴を最も持っています。三椏紙は、楮に比べると幾分繊細で、虫にも強い特徴を持っています。そして『和紙の王』と称される雁皮紙は、独特の光沢と渋みがあり変色もせず虫にも侵されず水にも強い、そして細かな文字を書くことに適しています。これらの原料を混ぜ合わせるのではなく、雁皮は雁皮らしく、三椏は三椏らしく、楮は楮らしく、それらの原料が持つそれぞれの特性をそのまま紙にしていることです。」と話した。

 
和紙の製造工程、叩解(こうかい)和紙の製造工程、叩解(こうかい)
 

また、出雲民藝紙は他の和紙とは紙料とネリの割合や漉き方が異なる。安部信一郎さんは「私たちは独特の漉き方『流し漉き』を使用しています。その中でもネリの比率は重要です。漉くときに私たちは少し濃いネリを調製しています。竹ふるいを用いて水中のパルプをすくいあげ、前後に揺らし、和紙の厚みを感じます。紙の厚みは均一である必要があり、十年以上の経験の積み重ねで判断します。」と話した。

 
出雲民藝紙は今でも伝統から伝わってきた紙漉き技術を受け継ぐ出雲民藝紙は今でも伝統から伝わってきた紙漉き技術を受け継ぐ
 

安倍榮四郎氏の精巧な造紙工藝に対し、1927年、民藝の父柳宗悅が出雲にて雁皮紙を鑑賞。このように評価した。:「雁皮紙、その色は落ち着きがあり、美しく輝き、品のある光沢がある。天下一の紙と呼んでも遜色ない。」。現在まで松江市八雲町「出雲民藝紙工房」にて伝統的な手漉製法を用いて手作りをしている。安部信一郎さんは「1300年も伝えられた和紙を、少しでもできるだけ生活の中に入れていただきたい。使ってみるとその良さがわかります。」と語った。

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