• Home
  • アート
  • 当代茶釜の新たなスタイル── 三代畠春斎
アート | ARTS

当代茶釜の新たなスタイル── 三代畠春斎

高岡市 2023/04/21 14:04
《流水文四方釜》 第60回日本伝統工芸展 NHK会長賞 ©Hata Shunsai
《流水文四方釜》 第60回日本伝統工芸展 NHK会長賞 ©Hata Shunsai
釜師
三代畠春斎

鋳造において400年以上の歴史を誇る高岡市金屋町。茶道具や仏具等の工芸作品は国際的な評価を得ている。近年、茶釜を製作している作家の中で特に注目を集めているのが《流水文四方釜》で第60回日本伝統工芸展にてNHK会長賞を受賞した三代畠春斎である。

 
《達摩形鉄瓶》 第49回伝統工芸日本金工展(令和3年) MOA美術館賞 ©Hata Shunsai《達摩形鉄瓶》 第49回伝統工芸日本金工展(令和3年) MOA美術館賞 ©Hata Shunsai
 

三代畠春斎(本名:弘政)は富山県高岡市に生を受け、幼少期から陶芸や建築に興味を持っていた。師は父親である二代畠春斎。2009年には正式に三代目を襲名した。三代畠春斎氏はこう話した。「きめ細かく美しい肌合いとそれにともなうおおらかで柔らかなかたちが特色です。代々受け継いだきめ細かな肌に現代感覚を取り入れたかたちを特色としますが。流水文四方釜(2013)達摩形鉄瓶(2021)やわらかさと鋭さ、機能と装飾、相対するものが互いに響きあい調和する美しさを求めて制作しております。」

 
《流水文四方釜》局部アップ画像 ©Hata Shunsai《流水文四方釜》局部アップ画像 ©Hata Shunsai
 

《流水文四方釜》について畠 春斎氏は「水の流れを最小限の要素で表す試みがかたちになったものが本作です。やわらかさのなかにあるシャープな部分が心地よい緊張感をもたらします。」と説明した。工芸史家寺尾健一氏は以下のように高く評価している。「底部から肩へ一気に向かう鋭い曲線と、伸びやかな四方の張り出しのおおらかさとが見事にあわさり、生新な気風がみなぎっている。控えめに施した流水文が清冽な音をわずかに響かせ、水滴及び渦を形象した鐶付と鈕とのバランスにも繊細な心遣いが見て取れる。茶釜の新しい造型を目指す作者の努力と研鑽がここに結実した。」

 
《菱文平釜》 高さ17.0、径28.0 cm ©Hata Shunsai《菱文平釜》 高さ17.0、径28.0 cm ©Hata Shunsai
 

実際に三代畠春斎の創作の道に注目してみると現代的要素との融合及び「型」の表現技法を重視していることが分かり、個人と時代の意義に合った創作を実験している。畠 春斎氏は「茶釜は美術品である前に道具でもあります。ですから見た目の奇抜さではなく空間との調和や使いやすさを考えなくてはなりません。私はその上で自分らしさを出していければと考えています。」と話した。2020年の作品《菱文平釜》ではより直接的でより個人的なスタイルで解釈されている。全く新しい定義を用いられたこの作品の姉妹作はニューヨークのメトロポリタン美術館に収蔵されている。茶釜でどのように殻を破り、斬新なスタイルを生み出していくのか。今後も畠春斎の輝かしい未来に目が離せない。

TOP