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不規則な緑釉で織部の範疇を越えた陶芸家 鈴木徹

岐阜県 2022/12/30 17:48
鈴木徹さんは「『萌生』シリーズの作品です。これまで薄緑色と濃緑色の二つの塗り分けによる表現が中心でしたが、最近は緑のなかに青色が出て多彩になるように釉薬を調合しています。草木が萌出る際の“瑞々しさと力強さ”を見とって貰えたら嬉しい限りです。」 と話した。  奥行12.5 幅66.0 高18.5 cm ©Tetsu Suzuki
鈴木徹さんは「『萌生』シリーズの作品です。これまで薄緑色と濃緑色の二つの塗り分けによる表現が中心でしたが、最近は緑のなかに青色が出て多彩になるように釉薬を調合しています。草木が萌出る際の“瑞々しさと力強さ”を見とって貰えたら嬉しい限りです。」 と話した。 奥行12.5 幅66.0 高18.5 cm ©Tetsu Suzuki
陶芸家
鈴木徹

2005年の作品《緑釉鉢》が第1回 菊池ビエンナーレ展大賞を受賞したことでその名をあげた陶芸家鈴木徹。渦巻と川流をテーマとし、大量の緑釉(織部釉)を用いて創作した。業界専門家は「鈴木徹先生は伝統的な織部とは違う、緑釉の世界を展開させている。」と評価している。2015年には第62回 日本伝統工芸展にてNHK会長賞を受賞、2017年には自身の作品が宮内庁に収蔵され、現在も活躍している陶芸家である。

 
「緑釉鉢」2005年第1回菊池ビエンナーレ「大賞」受賞作品「緑釉鉢」2005年第1回菊池ビエンナーレ「大賞」受賞作品 ©Tetsu Suzuki
鈴木徹さんは「流れを表現した作品です。それまでの櫛目の仕事から泥を塗る仕事に変わった頃の作品です。」と話した。
 

鈴木徹は1964年岐阜県多治見市出身、人間国宝 鈴木藏氏の長男である。大学時代は仏教美術史を専攻。卒業後は恩師の紹介で京都府立陶工高等技術専門校にて学び、陶芸家としての人生をスタートさせる。鈴木徹さんはインタビューに対してこう話した。「大学の恩師に京都陶工府立高等技術専門校を紹介されて、そこに進みました。そこで初めて土に触れました。作った作品が窯から出てきたときに、自分のなかのDNAが覚醒するような思いを感じ、この道に入ることを決めました。京都に5年間居たのですが、美術館や博物館が大好きで何度も、何度も通いました。そこで見た岡部嶺男の織部の鉢に大きな衝撃を受けました。初めて発表した作品が緑釉であることはこのことと大きく関係しています。」

 
「緑釉花器」第62回日本伝統工芸展(平成27年) NHK会長賞 縦39.5 横44.5 高26.0 cm ©Tetsu Suzuki「緑釉花器」第62回日本伝統工芸展(平成27年) NHK会長賞 縦39.5 横44.5 高26.0 cm ©Tetsu Suzuki
 

鈴木徹の作品は大きな壺から小さなお猪口までと非常に広範囲に及んでいる。創作のインスピレーションや理念についてはこのように話した。「私の使用している釉薬は織部釉です。本来なら作品名を織部と名付けるべきところですが、織部と云う範疇を超えた仕事をしたい思いから緑釉と名付けています。織部というと鳴海織部や、黒織部、織部黒、志野織部等々、色々な技法がありますが、総じて沓茶垸に代表されるように歪んだ形や、剽げた意匠が特色です。私はこうした織部の特色にとらわれることなく、織部釉の緑色の美しさを前面に出した作品を制作しています。これが私の作品の特色です。」

 
「三彩茶埦」©Tetsu Suzuki「三彩茶垸」©Tetsu Suzuki
鈴木徹さんは「最近やり始めた三彩の茶垸です。釉薬を3色使っているので三彩と呼んでいます。茶垸を作るのが楽しく感じています。作りこんでいく感じが、他の作品よりも奥深い感じがします。茶垸に施された釉薬の表情から、いろいろな皆さんそれぞれの景色を見とって貰えたら嬉しい限りです。」
 

インタビューの最後には「私の作品はその時々で色々なテーマを持って制作してきました。渦潮を思い描いていた時、川の流れや波濤を思い描いていた時、そして草木が萌出る際の瑞々しさ力強さを思い描いていたりといろいろですが、皆さんそれぞれが私の器をみていろいろな景色を思い描いて貰えたら幸いです。以前、私は流れをイメージして制作していたのですが、釉薬の景色から近所の山の景色に重なると云われて、そんなふうにも見えるのかと驚いたことがあります。私が意図せぬ景色でも、その人がそういうふうに見えればそれはそれで立派な景色。それがやきものの面白いところだと思います。」と語った。
 

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