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「鋳込み硝子」── 石田征希さんの文化ガラス工芸への望み

京都市 2022/07/07 11:07
左上から右上、左下から右下に 合子 宝相華菱文 径9.2×9cm、合子 白い花 径9.2×9cm、合子 飛花唐草文 7.5×7.5×6.5cm、合子 雪の花 径7.8×6.8cm、合子 牡丹と蝶 7.5×7.5×6.5cm  ©石田征希
左上から右上、左下から右下に 合子 宝相華菱文 径9.2×9cm、合子 白い花 径9.2×9cm、合子 飛花唐草文 7.5×7.5×6.5cm、合子 雪の花 径7.8×6.8cm、合子 牡丹と蝶 7.5×7.5×6.5cm  ©石田征希
鋳込み硝子作家
石田征希

珍しい「鋳込み硝子」を駆使して制作するガラス工芸作家石田征希は、古代のガラス工芸品パートドヴェールと日本の美意識を組み合わせ、日本のガラス工芸の世界に新たな風を吹かせました。石田征希氏はインタビューに対して次のように語られた「日本には漆や染織作品等昔から受けつがれた美しい作品がたくさんあります。ガラス作品にはその様な、受け継がれてきた和の作品はありません。私はいままでなかった和の美しい作品を、現代のガラスで創ってゆきたいと思っています。」

 
左から右へ 合子 連珠宝花 径11×10cm、合子 唐花文 径11×10cm  ©石田征希左から右へ 合子 連珠宝花 径11×10cm、合子 唐花文 径11×10cm  ©石田征希
 

1943年大阪市生まれの石田征希氏は、1970年に当時染織図案デザイナーだった石田亘氏と結婚し、芸術の勉強を始めた。夫婦はある時、アール・ヌーヴォーのガラス作品展を見て、見たこともないガラス工芸に驚いた。夫婦は独学で研究を模索し、「Pâte de Verreパート・ド・ヴェール」技法を京都の美意識と融合させ新しい「鋳込み硝子」を創り出した、その優れた技術は京都府から無形文化財に選ばれた。石田征希氏はこの技法をもとに、花鳥や染織など京のイメージをモチーフにした作品を創作している。これまで京都、東京、大阪などで個展やグループ展が何度も行われており、作品は日本の宮内庁にも所蔵されている。

 

「小筥 鴛鴦文」 ©石田征希
「小筥 鴛鴦文」 ©石田征希
 

石田征希氏は次のように語った。「昔からお茶やお花を習い美しいものが好きでした。今でもやわらかで上品で繊細な和の作品を創りたいと思っています。2019年の作品「小筥 鴛鴦文」について石田征希氏は次のように説明する。「この作品は左右対称のデザインをメインに構成しています。また小筥ですので文様のサイズ感も重要です。2羽の鴛鴦が向き合う様に配置し、その間に唐草文の花や、葉などを入れ、それで1つの帯状にし、その他の文様と違和感がない様に配置しています。菱文の中には白菊を入れ、それらを小さめのサイズで蓋の下部に帯状に配置し、さらに下には鳳凰や鱗文等で繊細に飾っています。」

 

「硯箱 標野ゆき」 第36回日本伝統工芸近畿展 日本工芸会賞作品 ©石田征希
「硯箱 標野ゆき」 第36回日本伝統工芸近畿展 日本工芸会賞作品 ©石田征希
 

2007年の作品「硯箱 標野ゆき」が第36回日本伝統工芸近畿展日本工芸会賞を受賞。石田征希は次のように語られた「『硯箱 標野ゆき』今までにないガラスの硯箱です。この作品は左右対称のデザインをメインに構成されています。有名な額田王の和歌『あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る』の中の標野行きは、いろいろな花が美しく咲いているであろうかと花々を散らし、金彩で唐草を表現しました。中には金彩で唐草を施した硯と筆置きも入っています。」石田征希氏は女性の柔らかさと繊細さを用いて、西洋の技術と日本文化を作品に融合させ、雅で精巧な鋳込み硝子を創り上げた。優美な作品は各界から好評を博し、彼女のガラス工芸文化の理想を実現した。


 
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