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「装飾」からの解放で再び手にした自由 截金ガラス第一人者── 山本 茜

京都市 2022/02/09 07:22
「天香具山」© Akane Yamamoto
「天香具山」© Akane Yamamoto
截金ガラス作家
山本 茜

大英博物館にて開催中の特別展「現代日本の女性作家、6つのストーリー」に截金ガラス作家山本茜の作品が展示されている。山本茜氏は「截金ガラス」と呼ばれる技法を生み出し国内外へと流布していった。彼女は実在する唯一の截金ガラス作家である。透明なガラスの中に截金を封入することで、截金が空中に漂っているような視覚効果を生み出した。この技法は模倣不可能なほどに複雑で、日本美術史研究家の中之堂一信教授は「截金ガラスは異質な材料の組み合わせという大胆な挑戦であり、斬新かつ繊細な手法は非常に魅力的である。」と高く評価している。彼女の作品は宮内庁、大英博物館、富山市ガラス美術館などに収録され、コレクター界隈や芸術界隈で絶大な人気を誇る。

 
山本茜氏の仕事中の写真山本茜氏の仕事中の写真
 

山本 茜(Akane Yamamoto)は1977年石川県金沢市に生を受け、高校時代に名画家の上村松園に影響され、大学は松園など名画家を多数輩出した京都市立芸術大学にて古典絵画の模写を専攻した。そこで出会ったのが截金であり、その美しさや繊細な優雅さに惚れ込んだのも同時期である。2000年には人間国宝の江里佐代子に師事し、截金技法を学んだ。その後彼女は高難度の截金ガラス技法を自ら生み出し、独特な技法は国内外で多数の賞を受賞するなど賞賛されている。日本伝統工芸展NHK会長賞、伝統文化ポーラ賞奨励賞、京都府文化賞、京都美術文化賞などを受賞している。

 
截金硝子香合「ふくら梅」© Akane Yamamoto截金硝子香合「ふくら梅」© Akane Yamamoto
 

実在する唯一の截金ガラス作家である山本茜氏は「装飾技法である截金を施すと、出来上がった作品が、「截金で飾った絵」、「截金で飾った箱」になってしまう。そうではなく、私が目指したかったのは、「截金で表現すること」でした。どうしたら截金を表現の主体にできるのか、悩み抜いた末、とある辞書に「装飾とは、『物の表面に最後に施すもの』」と書いてあるのを見つけ、「物の表面に施さなければいい」と思いつき、それでは宙に浮かせたら截金そのものを見てもらえるのでは、との考えから、初めは空中に截金を漂わすことを試みましたが、流石に脆い金箔を宙に漂わせるのは無理がありましたので、透明なもので挟めば同じような効果が得られるのではないかと、透明なガラスに封入することを思いつきました。」と話した。

 
「一葉舟(Leaf Boat)」、=2022年2月5日、大英博物館提供「一葉舟(Leaf Boat)」、=2022年2月5日、大英博物館提供
 

今回、大英博物館で展示された作品「一葉舟(Leaf Boat)」。山本茜氏は「幼少の頃、雨が降った時に増水した用水路の流れに葉っぱを浮かべて追いかける遊びが大好きでした。その遊びをイメージして制作した作品です。途中で障害物に引っかかったり、側溝の穴に入って見失ったりしましたが、子供心に葉っぱが川へ、そして大海原へ辿り着くことを夢見ていました。自分自身の将来を葉っぱに重ねていたのかもしれません。」と語った。

 
「未来へ」© Akane Yamamoto「未来へ」© Akane Yamamoto
 

截金は主に仏像や仏画の装飾に使用される。当初山本茜が截金をガラスの中に封入しようとした時、周りの人々は口を揃えて「無理だ」と言ったそう。しかし、彼女はそれでも截金を愛し、大胆な挑戦をした。山本茜氏は「ガラスの中で「装飾」という役目から解き放たれて自由に自己主張する截金をぜひ見てください。」と熱く話しました。
 

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