魂を穿つシンボル アルジェリアの芸術家── Yazid OULAB(ヤジド・ウラヴ)
Yazid OULAB
Yazid OULAB(ヤジド・ウラヴ)はアルジェリア出身の芸術家で、現在フランスのマルセイユにあるアトリエで活動している。文化的な名家と労働者の階級が混じった家庭で育ち、それが彼を詩人のような性格を持つ匠にたらしめると同時に魂を持つ芸術家へとたらしめた。彼は作品中で現代の言葉で忘れられた歴史の物語を解釈し文明の起源を越えようと試みる、我々を別の姿で異なる時代を跳躍するように行き来させる。彼は歴史を語る哲学者であり、我々に書くこと、数字、宗教や多元文化を新たに発見させてくれる。
Yazid OULAB, Alif, 2012, set of 8 polished stainless steel nails L. 350 cm, ed. 8 ex. + 4 E.A., Yazid Oulab exhibition, FRAC P.A.C.A, 2013 ©Galerie Loft Paris
すべての作品中で、ALIF(釘)は最もYazid OULAB(ヤジド・ウラヴ)の創作理念を解釈できるものだ、芸術家が文字の象徴する意味と単純な物をリンクさせ。釘は一つの魂と時代のシンボルである。西洋キリスト教文化で釘は人とイエス、神の三者の関係を結びつける意味を持つ。アラビア文化ではAlifはアルファベットの一番目であり創世神(Allah)を表す、動詞の「学習」という単語の第一音節でもある、この字には聖なる言葉と知識の継承の意がある。
Yazid Al maaden, Yazid OULAB, Urban mountain, 2012, Corten steel, H. 5 m x W. 12 m, Al Maaden Golf Resort (Morocco). ©Galerie Loft Paris
釘は建築構造の中で最小単位であり、古くから多くの寓話の中にも頻出する、ギリシャ人にとっては宿命を意味し、バビロンでは守護する物を意味し、ガリア人にとって権力を象徴する。メソポタミア文化では楔形文字の起源でもある。芸術家は作品を通じて人類の宇宙空間の位置を再構築し各文化、信仰、異なる時代の積み重なりや年輪を定義する。
Cosmic Christ, 2013, Graphics stamped with a drill on canvas, 207 x 154.3cm ©Galerie Loft Paris
Yazid OULAB(ヤジド・ウラヴ)は伝統の枠から抜け出すことに挑戦するだけでなく、西洋芸術美学に疑問を提起し続け、絵画にはオリジナルの画材と技法を探し出す必要があると考えている「どのツールが画家と匠の化身で、同時にスタイルとリズムと音感を結びつけるのか?脳内で自然に電動ドリルが思い浮かんだ、電動ドリルの回転がゆっくりとキャンバスを腐食させ私の脳内を穿った。」
The Slave, 2013, Graphics stamped with a drill on canvas, 207 x 154.3cm ©Galerie Loft Paris
Yazid OULAB(ヤジド・ウラヴ)は電動ドリルを取り匠の身体感覚で黒いキャンバス上で回旋させ、少しずつ十字架が背負う罪深い魂と世界と交差する聖者を穿ち、創世記の神話で語られる人類が最初に呼吸した瞬間にまで遡る。芸術家は砂漠の砂嵐の中を歩く修行僧のように旋回し舞うように世界の喧騒を通り抜け、息を呑むような人類文明の無限の輪廻の軌跡を黒いキャンバスの上で反射する微かな光に沿って描き出そうとする。
展覧のお知らせ: チュニジアのSELMA FERIANIギャラリーでYazid OULAB(ヤジド・ウラヴ)の最新個展が開かれます。ご興味のある方はオンラインで鑑賞することができます。