欧米芸術市場の新たなポイント：二十世紀フランスを代表する彫刻家　フィリップ・ヒキリー（Philippe HIQUILY）

アメリカのドラマ《Billions》（ビリオンズ）にハマった人は、主人公ボビー・アクセルロッド（Bobby AXLORD）のニューヨークにある豪邸のリビングに置かれた巨大な彫刻が記憶に残っているに違いない。《Marathonienne》という名前は、フランスの名彫刻家フィリップ・ヒキリー（Philippe HIQUILY）が由来だ。フィリップ・ヒキリー（Philippe HIQUILY）は2012年にLoftギャラリーで『Hiquily Catalogue Raisonné』の作品全集を出版した後、88歳の誕生日を迎え逝去された。フィリップ・ヒキリー（Philippe HIQUILY）の逝去に伴い、近年、作品についての問い合わせが多くなり、ヨーロッパのオークション市場での販売価格が注目されている。

Philippe HIQUILY & Action sculpture, 1960 © Nathalie Waag

フランスの彫刻家　故フィリップ・ヒキリー（Philippe HIQUILY）（1925-2013）氏は1925年にパリのモンマルトで生まれ、1948年にフランスのパリ高等芸術学院(École nationale supérieure des Beaux-arts)に入学し、彫刻家であるセザール・バルダッチーニ(César BALDACCINI)と同級生となり、同期には有名な芸術家であるジャン・ティンゲリー（Jean TINGUELY）、マルセル・デュシャン（Marcel DUCHAMP）、マックス・エルンスト（Max ERNST）、ジョルジュ・バタイユ（Georges BATAILLE）等と親しい間柄であった。1953年に卒業後、新しい創作技法「自発性金属Métal Direct」に専念し、作品は超現実主義と新写実主義の間にあり、原始的な芸術の古風なイメージと現代芸術の簡潔な曲線を融合させており、その独特な風格は芸術家ジェルメーヌ・リシエ（Germaine RICHIER）の目に留まった。

Marathonienne 6M，Vitry sur sienne，France © Galerie Loft

1959年に渡米しニューヨーク芸術界の時代の寵児となり、第1回展覧会の開幕当日に作品が全て完売し、そのうちの1つはグーゲンハイム美術館(Guggenheim)が収蔵した。同年パリビエンナーレ最優秀芸術賞を受賞した。1960年に家具の創作に没頭し、ファッションセレブであるプログレッシブ・デ・ノアイユ（Vicomtesse de NOAILLES）や当時の人気インテリアデザイナーのアンリ・サミュエル（Henri SAMUEL）に贔屓にされ、この時期には高価な銅で創作を試みた。1985年フィリップ・ヒキリー（Philippe HIQUILY）はパリ近郊のVitry sur siene現代運動センターへ6メートルの高さのマラソンガール「Marathoniene」を設計し、今では彼を代表する彫刻の一つとなっている。

2010年に上海に建設された12メートルの巨大風車Girouettes Marbella-Sanghai © Galerie Loft Paris

現在、世界の各美術館でフィリップ・ヒキリー（Philippe HIQUILY）の軌跡をたどることができる、ニューヨークのMOMA現代美術館、ワシントンのハーシュホーン博物館、米テキサス州のロスレン・マクス博物館、パリのポンピドゥセンター、パリ芸術と歴史博物館、パリ科学博物館、カナダのユダヤ人博物館、キューバのハバナ現代美術館等等。2010年世界博覧会にて、フィリップ・ヒキリー（Philippe HIQUILY）は中国上海市政府の招待を受け、3基の12メートルに及ぶ巨大な風車彫刻の公園を創作し、現在では上海静安区のランドマークとなりました。