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柔道の源流── 幕末名門柔術「天神真楊流」

東京都 2023/12/29 16:06
「天神真楊流」育道館師範坂本忠彦氏
「天神真楊流」育道館師範坂本忠彦氏
柔道の源流
天神真楊流

柔道は日本の現代武術の中で最も国際的な影響力を持っている。その源流の大部分が幕末柔術の名門「天神真楊流」である。柔道の創始者である嘉納治五郎自身も天神真楊流の師範であった。その弟子には「山嵐」で有名な西郷四郎、イギリスに柔道を伝えた谷幸雄も天神真楊流の出身である。これらのことから、現代武道「柔道」と、古流柔術「天神真楊流」との継承と進化の関係は想像に難くないだろう。

 
関節技の稽古、ウクライナ出身の門人リトシン・イゴリさん(右)と岩倉淳さん(中)関節技の稽古、ウクライナ出身の門人リトシン・イゴリさん(右)と岩倉淳さん(中)
 

育道館の事務局長 渡邊卓也さんは、30年にわたり天神真楊流柔術を研究している。「『天神真楊流』は磯又右衛門柳関斎源正足によって、1830年頃に『楊心流』と『真之神道流』2流の奥義を統合して創始される。幕末の頃には名門柔術流派となり幕府講武所での教授も始まる。全国には5千名の門人をかかえる事となった。黎明期の講道館メンバーには横山作次郎、井上敬太郎、西郷四郎、など天神真楊流出身の方が多く存在します。」

 
武器技の稽古、渡邊卓也さん(右)と小澤修一さん(左)武器技の稽古、渡邊卓也さん(右)と小澤修一さん(左)
 

柔道と天神真楊流の継承と進化の関係について、渡邊卓也さんはさらに次のように述べた「天神真楊流は『朽木倒し』、『腕がらみ』、『袖車』、など名称と共に柔道に組み込まれた技もあれば『大外刈り』や『背負い落とし』など名称が変わっても引き継がれている技も見かけます。『投げ』または『引き込み』から寝技への連携が多くみられる事が特徴的です。これらの技術は現代でも寝技を得意とする柔道家に見ることができる。」

 
「天神真楊流」育道館の事務局長渡邊卓也さん(右)と古川眞一さん(左)「天神真楊流」育道館の事務局長渡邊卓也さん(右)と古川眞一さん(左)
 

天神真楊流は第五代家元(宗家)である磯又右衛門の没後、少数の師範のみが伝承していった。現在の日本で最も重要な継承者は育道館師範の坂本忠彦氏である。坂本忠彦氏は49歳の時に皆伝の許を得て、育道館の代理師範を務める様になった。前代の師範 酒本房太郎そして同門の久保田敏弘が亡くなった現代において、天神真楊流柔術の技を完全に掌握する唯一の師範となってしまった。83歳になる今、天神真楊流の弟子へ自らが習得した技を伝えるべく日々努力を続けている。現代柔道の基礎を築いた古流柔術の技を次世代へ継承していくのだ。

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