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移りゆく無常と具象化の境地 注目される現代日本画作家── 川瀬伊人

東京都 2022/04/27 10:34
《月の光・Moonlight》182×486cm 2003 ©Yoshihito Kawase
《月の光・Moonlight》182×486cm 2003 ©Yoshihito Kawase
日本画作家
川瀬伊人

川瀬伊人(Yoshihito Kawase)、1973年東京出身、2002年東京芸術大学美術研究科日本画専攻、2005年博士課程修了。尾形光琳、表屋宗達などの「琳派」の絵師たちの影響を受ける川瀬作品の特徴は、画材の特性を引き出しながら作品制作を追及する姿勢だ。このようにモチーフと画材の相性を探る創作手法を通じて彼の心情を作品へ投影していると考えられる。2005年の東京藝術大学博士課程修了時には野村賞を受賞、作品は大学美術館に収蔵され、藝術大学を卒業した後プロの芸術家として活動する現在に至るまで多くの賞を受賞し、現代で最も注目されている芸術家の一人である。

 
《水・Water》116.7×90.9cm  2016 ©Yoshihito Kawase《水・Water》116.7×90.9cm  2016 ©Yoshihito Kawase
 
 

2019年にはニューヨークで開催された Ronin Globus OnBeat Artist-in-Residence Program にて「流水」をテーマにした作品群で最優秀賞を受賞した。その中の作品「水」と「月の光」は、水面に映る風景をモチーフにした作品であり、川瀬伊人氏は取材に対し、「形を変え、常に動き続けるもの、つかみ切れない『たゆたふ』とした無常感に昔から興味を抱いておりました。水の表面に映り出される不確かな風景に魅かれるのは、それが根底にあるせいなのかもしれません。実景を描くよりも、水面に映る幻影を通して心象風景を描く方が自身の心情を投影しやすいようにも思います。興味の対象は時と共に変化しても、実景よりも間接に見えるもの、あるいはイメージを高めないと掴めない形而上のモチーフに興味が引かれます。」と語った。

 
 
《気の積層・Air》41×53㎝ 2022 ©Yoshihito Kawase《気の積層・Air》45.5×38cm 2022 ©Yoshihito Kawase
 

最新作シリーズ「気の積層」は、入院生活(現在川瀬伊人氏は無事退院されています)でインスピレーションを得た作品で、川瀬伊人氏は「これは大気のうねりや、気の流れといった目に見えない現象を和紙と墨というシンプルな画材を使い表現しようとする試みです。空気や気の流れ、または街の中で聞こえてくるノイズを視覚化するという作品制作ですが、イメージを具現化するのが大変難しくて、思考実験を繰り返し、手探りを続けながら制作を進めています。」と語った。

 
《神鳴り・Sound of Thunder》50×60.6cm 2018 ©Yoshihito Kawase《神鳴り・Sound of Thunder》50×60.6cm 2018 ©Yoshihito Kawase
 

川瀬伊人氏の作品は、東京芸術大学美術館、台東区、法務省、平塚市美術館、徳川美術館、赤坂日枝神社、茨城県近代美術館、郷さくら美術館、佐藤美術館に収蔵されています。これまでに国内外の個展やグループ展へ多く参加してきました。今後について、川瀬伊人氏は明るく希望に満ちた姿で次のように述べた「絵具の素材力を生かしつつ、『静』より『動』、『nostalgic』よりも『futuristic』、自分自身が未開のテーマや制作手法をワクワクしながら積極的に迎えに行く、そうした作品作りを心掛けています。」
 

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