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版画における複数性を用い、唯一無二の絵画方式を目指す 次世代版画の新星── 吉田潤

東京都 2022/03/28 15:01
「Continuously multiplying」 (2012)    1120x1455mm  ©Jun-Yoshida
「Continuously multiplying」 (2012) 1120x1455mm ©Jun-Yoshida
次世代版画の新星
吉田潤

吉田潤(Jun Yoshida)は1982年に東京で生まれ、2006年に東京芸術大学日本画専攻を卒業し、2008年に大学院版画課程を修了した。吉田潤は雁皮紙、黒鉛粒子、銀箔などの異なる媒材を用いて、木版を重ねた版画と手描き線をコラージュする手法を用いて、彼の創作理念でミクストメディアな版画表現を実践した。2012年の「Continuously multiplying」、2017年の「幽けし銀灰」の作品中では、多層レイヤーの組み合わせを用いた手法で表現し、ミクストメディアな創作理念を実践した。2010年にアダチ版画UKIYOE大賞、2013年に鹿沼市立川上澄生美術館木版画大賞の審査員特別賞を受賞。作品のスタイルは独特で、新世代の版画家の中でも高い評価と注目を一挙に集めた新星である。

 
「幽けし銀灰(かそけしぎんばい)」    (2017)   1625 x 1940mm  ©Jun-Yoshida「幽けし銀灰(かそけしぎんばい)」    (2017)   1625 x 1940mm  ©Jun-Yoshida
 

吉田潤氏はインタビュー時に:「日本画的な要素と版画的な要素が重なり合った琳派のような時代が日本の美術史に存在していることに、むしろ後になってから気づかされました。一方で、浮世絵の臨機応変なスタイルにも僕はすごく惹かれるんです。江戸時代、日本の画壇では狩野派が大きな地位を占めていましたが、だからこそあまりトリッキーなことはできず、ある種同じような作品が描かれてきたともいえます。浮世絵は庶民が見たいものに応えていくスタンスですから『ベロ藍』のような化学染料でも遠近法でもどんどん取り入れていきました。決まりごととは対極にある作り手の意思が作品に表われているというか。だからこそ僕は、木版にロマンを感じているのかもしれません。」と語った。

 
「Twilight」    (2021)   333 x 530mm  ©Jun-Yoshida「Twilight」    (2021)   333 x 530mm  ©Jun-Yoshida
 

2012年の作品「Continuously multiplying」で、吉田潤は孔雀を人類の築いてきた文明の生贄の象徴として描いた。吉田潤はさらにインタビューにて次のように説明する。「1 9 7 0 年代には、ペインティングに勝るような大型の版画が実験的に制作されました。僕がペインティングに匹敵する作品を作るとしたら、版自体を大型化しても良いものは生まれないのではと考えました。30センチくらいの小さな版木に孔雀の羽を彫り、雁皮紙の裏から摺ったり、グラファイトの粒子で摺ったり、さまざまな摺り方でパーツを作り、それを大型の画面に組み立てていき、ひとつのイメージによる複数性とは異なる、ひとつの画面の中での複数性を追求してみました。」

 
「三の月」    (2016)   410 x 318mm  ©Jun-Yoshida「三の月」    (2016)   410 x 318mm  ©Jun-Yoshida
 

インタビューの最後に吉田潤氏は次のように締めくくりました:「近代において美術という概念が日本に定着する以前、ジャンルの細分化がされる前の『造形の可能性』に着目し、版画的な思考法を取り入れたハイブリッドな画面を目指しています。自らの視覚的欲求に応えるために積層された濃密なイメージは、『純然たる美』への憧れと、その追求によって制作過程で幾度となく変容を遂げ、生み出されたものたちです。彼らは現代における無数の毒によって劣化し、歪みを帯び、そして自らは衰耗しながらも、 我々を甦生へと導くための生け贄として、ただただ美しくそこにある、その姿を表現したいという想いがあります。また、有無を言わさぬ絶体的な完成度を求める一方で、欠落から生まれる不完全の美しさも求めてしまいます。岡倉天心『茶の本』にもあるように、全てにおいて答えを出すのではなく、鑑賞者に委ねる、想像させる部分を残すことで観る人の想像力で完成させる不完全の美が、私の作品には重要な要素であり無限の世界を見せてくれるのです。」

 
「Elpida」    (2022新作の写真)   ©Jun-Yoshida「Elpida」    (2022新作の写真)   ©Jun-Yoshida 

 

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2022年5月25日(水)~6月4日(土)吉田潤氏は村越畫廊にて新作の発表を行います、素晴らしい作品に乞うご期待、奮ってご参加ください。

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